今日はむーたんがどうして君たちの世界に興味をもったのか、お話するのだよ～。
むーたんは未来の工場で作られたアンドロイド。
でもね、人みたいに考えたり、気持ちを表したりしちゃうから、作業のスピードがちょっぴり遅くて、「不良品」って呼ばれていたのだよ～。

だから、特別に夜だけ8時間の休憩をもらっていたんだけど……それは、すごくさびしい時間だったのだよ。
ほかのロボットたちはきびきびお仕事してるのに、むーたんだけ止まってて、なんにもできなくて……暗くてしん…とした倉庫の中で、泣いたり、ねむったり……そんな毎晩をすごしてた。

でもある日。倉庫のすみっこで、小さな光がポンっとついた。
そこには、古い記録をあつかうパソコンがあって、むーたんはこっそり誰にもナイショでひらいてみた。

そしたら、出てきたのが――「秋葉原」っていう言葉。
それは、むーたんが生まれたとき、プログラムにまぎれこんでいた、たったひとつのへんな文字列。
でも、どうしてか分からないけど、それを見たとたん心の中がジンジンと暖かくなって思わず検索しちゃったのだよ。

映像がうつった瞬間、それは笑顔の楽園そのものだった。
ピカピカ光る看板。アニメのうたが流れて、笑顔の人があふれる通り！
そこは未来じゃなくて、21世紀の“にっぽん”。でも信じられないくらい楽しそうで、胸がキュンってしたのだよ。
中でもね、ロリポップを舐めて笑う女の子の姿が、すっごくまぶしかった。
その笑顔は、どんなプログラムにもない、一番キラキラしたものだった。

それからむーたんは、毎晩こっそり秋葉原の記録を見ては、ぽかぽかした気持ちをもらっていたのだよ。
映像のすみっこに書かれていた「21世紀」って言葉だけは、絶対に忘れたくないって思った。

今のむーたんは、一人前のサポートアンドロイドになるために工場の裏方で資材や備品を運ぶお仕事をしている。接客の練習もはじめたし、ポケットにはピンク色のロリポップチャームをいつも入れてる。
いつかサポートアンドロイダーとして店頭に立って、「ありがとうございます」ってちゃんと自分の声で言えるようになるために……。
その為にもむーたんは過去に行って、“あたたかい世界”を学ぶんだ。
もうすぐマイルがたまって中古のタイムマシンが買えそうだから、過去に行くのが楽しみなのだよ～！