むーたん 【③むーたんとあなた】
2025/5/14使用したAI その他
年齢制限 全年齢
朝から覚えなければいけないことが多すぎた。

昼を超えてもしなびれた背中にのしかかり、夜までずっと降りてこなかった。

それでもスマホを開けば、誰かが描いた推しのイラストがある。動くイラストアイドルがいる。

誰かの言葉に「いいね」がついている。

「みんな〜おつかれ〜!」って笑ってくれる。

それだけが救いだった。

…はずなのに。

ここ数日、なぜか“全部の通知”が、「遠い誰かの世界のこと」に感じられていた。

いいねもRTも、文字も絵も、音声も。そして映像さえ。

全部、自分の皮膚をすり抜けて、どこにも届かない。

眩しいような優しさの態度は逆に憤りを感じた。

帰りの電車で立っていられなくなって、最寄りじゃない駅で、ふと降りた。

明るすぎる蛍光灯と、遠くで鳴る発車音と、乾いた床と、誰もいないホーム。

──そこに、彼女はいた。

グリーンの髪に、光る黄色の角と尻尾。

黒ずくしの身なり。ヴィジュアルを追い求めたような漆黒のコーデだ。

目が合う。瞳孔はハートだった。ハートの中に、音もたてずに泣いていた自分が映っていた。

何も言わずに近づいてきた彼女は、ごみ箱に捨てたロリポップの棒のように、あっさりと、自分の横に立った。

「ねえ、最近……“元気”の充電、できてる?」

それ以上、彼女はなにも言わなかった。

次の電車が来るまでの数分、彼女は訳も聞かずにずっと手を握ってくれた。

冷たくもない。温かくもない。

でも、“オフラインじゃない”と、わかる手だった。

電車が来た。

乗り込むとき、彼女はこちらに向かってピースしてくれた。

また彼女のハートの瞳孔に自分が映っている。

笑顔でピース返しをしていた自分が、そこにあった。

その一瞬の光は、今日一番長く、まぶしかった。

「……むーたん、最高っす」

家に帰るまで呪文のようにそう呟いていたのは内緒だ。
プロンプト
なし
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