柴ワンコが尻尾をぶんぶん振りながら、剣士ちゃんの足元で跳ねる。
「ワン！　（ご主人、ケーキ食べたい！）」

その声にくすりと笑い、剣士ちゃんは木べらを動かしながら答えた。
「もう少し待っててね。今、仕上げのところだから」

やがてテーブルに置かれたのは、イヌ用とは思えないほど立派なケーキ。
ふわふわのスポンジに、山のように盛られたクリーム。
どう見ても、イヌがひと口で食べられるサイズではない。

「……ちょっと大きく作りすぎちゃったかも」
剣士ちゃんは頬をかきながら苦笑する。

しかし柴ワンコは目をきらきらさせ、
「ワンッ！」と誇らしげに胸を張った。
まるで“これ全部ボクのだよね！”と言わんばかりに。
彼女はその様子に肩を落としつつも、どこか嬉しそうだった。

「……まあ、いっか。今日は特別だもんね」