白と金が柔らかく反射する聖堂で、
千束とたきなの衣が風のように揺れた。

天井から差し込む光が二人の肩をなぞり、
まるで本当に“神々しい存在”として舞台に立っているようだった。

千束がふっと笑う。

「わぁ……たきな、やっぱり綺麗だねぇ。
　その衣装、すっごく似合ってる。」

「任務なので当然です。……でも、千束も綺麗です。」

最後の一言だけ、たきなの声がほんの少しだけ柔らかい。
千束はその気配を逃さなかった。

「え〜？ もしかして今、褒めてくれた？」

「事実を述べただけです。」

そこで千束が、たきなの腰帯にそっと触れた。
金糸が織り込まれた赤の飾り紐が、二人の距離をいっそう近くする。

「これ、結び方ちょっと緩いよ。
　任務のときにほどけたら困るでしょ？」

「……自分で結べます。」

「いいじゃん、たきなは任せるの下手なんだから。」

千束の指先が器用に紐を整え、
たきなの腰元でふわりと美しい結び目が形作られる。

「はい、完成っ。うん、かわいい。」

たきなはわずかに頬を赤くしたまま、視線をそらす。

「……ありがとう。
　でも任務で“かわいい”は必要ありません。」

「必要あるよ。たきなが綺麗だと、私は嬉しいもん。」

たきなはしばし固まる。
そして、小さな息を整えた。

「……千束がそう言うなら、少しだけ。」

千束はその反応が嬉しくてたまらないというように目を細めた。

「ねぇ、たきな。」

「なんですか。」

「今日の儀式、絶対に成功させようね。
　二人ならきっと大丈夫。」

今度はたきなが笑う番だった。

「……はい。千束となら、どんな任務でも。」

光の中、二人の白装束がふわりと重なった。
その姿はまるで、
“世界を照らす双つ星”のように輝いていた。