秘密の母の日
2025/5/12使用したAI Stable Diffusion XL
年齢制限 全年齢
「……先生?」

駅前の商店街。カーネーションの束に囲まれて、思わぬ人物に声をかけられた。

「狭霧さん? えっ、花屋さん……?」

「はい。期間限定の短期バイトです。母の日強化要員として」

花柄エプロンと制服姿の狭霧華蓮は、制服の時だけとはまた違う、明るく、華やかな雰囲気をまとっていた。

紫峰怜花は驚きつつも、つい笑ってしまう。

「華蓮さんがバイトって、ちょっと意外ね。てっきり理論派で、労働には慎重なタイプかと」

「最初は、“母の日の市場動向と感情経済の関係”を調べるための観察目的でしたが……思いのほか、楽しくて」

「フフッなるほど、研究熱心ね」

「それに……花って、贈る側の想いが見えて、いいものですね」

そう言って、彼女はそっと小さな赤いカーネーションを手渡した。タグには「Thanks Always」とだけ書かれている。

「これは?」

「先生に。お母でなくとも、いつも私たちを見守ってくださっているので。ちょっと早い“ありがとう”です」

怜花は思わず言葉をなくし、小さく笑ってしまう。

「でも私、あなたのお母さんになった覚えは……」

「“母の日”って、血のつながりだけじゃなくて、“お世話になってる人に感謝する日”だって、花屋さんが言ってました」

「へ~そうだったの?」

「それ、店長さんが言ってたの?」

「いいえ。私が勝手に言っています!」

ふたりは声をひそめて、くすりと笑った。

怜花は花を受け取りながら、ふと思った。

教える側と教わる側なんて、ほんとは境界があいまいで。

こうして不意に、逆に学ばされる日もあるのだ。

「……ありがとう。なんだか今日、自分がちゃんと“先生”でいられてる気がしてきたわ」

「では来年も、お待ちしています。母の日限定で、“先生に一輪”キャンペーン」

「それ、正式に企画してみたら?」

「売上には関係なく利益率は低いと思います」

ふたりの笑いが、通りを吹き抜ける初夏の風に乗って、やわらかく流れていった。
プロンプト
なし
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