秘密のバースデーパーティー
2025/5/11使用したAI Stable Diffusion XL
年齢制限 全年齢
「……誕生日とは、なぜ祝うものなのでしょうか?」

「……え?」

紫峰怜花が書類整理をしていると、狭霧華蓮がひょこり顔を出した。

「あれは、産まれた日を“起点”として、1年ごとに区切っているだけです。だとすれば、“今日は特別な日”というのは、単なる人為的記号に過ぎません。……なのに皆、うれしそうにするのでしょうか?」


「うーん…でも、記念日って、どこかで“意味”をつけないと始まらないものじゃない?」

華蓮は考え込むように、指先を唇に当てる。

「先生、今日が誰の誕生日かはご存じですか?」

「え? ええと、うちのクラスにはいないはずだけど…」

「そうですか。では、少し早いですが――これをどうぞ」


彼女が差し出したのは、手のひらに乗るほどの小さなケーキ。いちごが一粒、真ん中にちょこんと乗っている。そして、その横には――ろうそくが一本だけ。

「…華蓮さん、これって……?」

「“誰のでもない誕生日ケーキ”です。正確には“非・誕生日記念ケーキ”。先生に、どうぞ」

「…ええと、それってつまり、誕生日じゃないのに祝うってこと?」

「はい。考えてみたのです。誕生日でない364日を、祝わずに過ごすのは公平ではないのでは、と」

「フェアじゃないから、祝う……?」

「人は、“今日は特別な日”という根拠を必要とします。しかし、何もない日を特別にする行為こそ、人間の創造性だと、私は思いました」

怜花は思わず、ふっと笑ってしまう。

「…それ、まじめに考えたの?」

「もちろんです。ケーキも、慎重に選びました。小さくても蝋燭が一本あれば、祝う理由としては十分かと」

蝋燭に火をつけていいか、と尋ねる彼女に、怜花は笑いながらうなずいた。
マッチを擦り、ひとすじの炎が灯る。

「…じゃあ、願いごとでもしようかな」

「“今日をなんとなく楽しく過ごせますように”が、最も適切かと」

「…いいわね、それ」

怜花がそっと火を吹き消すと、煙がくるりと空へ立ち上った。
ただそれだけのことなのに、不思議と心がやわらかくなる。

「ありがとう、華蓮さん。今日がちょっとだけ、特別になった気がする」

「それは、よかったです。先生も、非・誕生日おめでとうございます」

静かに微笑む彼女に、怜花もつられて笑った。
特別でも、記念日でもない日――でも、それでも祝う価値はあるらしい。
プロンプト
なし
コメント

 
ピッカ(AI Art repositor) ピッカ(AI Art repositor) 2023年9月より活動開始 491投稿53フォロー198フォロワー pop life department. m's × IROMIRAI 「25周年記念キャラクターデザインコンテスト」にて キャラクター《夢倉ミューズ》が最優秀賞をいただきました。 たくさんの応援とご縁に支えられて このような評価を頂けたこと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。 AIイラストのお仕事のご依頼を募集中です どうぞお気軽にDMまでお声がけください