その視線が、私を揺らす。※ショートストーリー付
2025/12/6使用したAI Stable Diffusion XL
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大聖堂に満ちる光は、今日だけは落ち着かない。
 白と金の衣の上で揺れるその光が、
 まるで私の胸のざわめきを暴くようで、
 静かな儀式のはずなのに心が少しだけ
 早く脈打つ。

 理由は分かっている。
 私の正面――儀式を見守る護衛の列の中、
 ひとりの青年がいる。

 彼は、私のほうを見ているわけではない。
 少なくとも、そう振る舞っている。
 けれど、分かる。
 時折、ほんのわずかに向けられる視線の気配。

 私が赤い帯を整えたとき。
 胸飾りに触れて祈りの呼吸を整えたとき。
 そのたびに、優しく甘い想いが
 彼女の心をくすぐる。

 気づけば、私も彼を見てしまう。

 巫女は男性と恋仲になることを禁じている。
 けれど、想いを抱いてしまうことまで
 禁じているわけではない。
 そう、自分に都合の良い解釈をし、
 胸が熱くなるのを心地よさとして受け止めた。

 ――見ないで。
 それとも、見ていて。
 そのどちらも言えない私は、臆病だろうか。

 儀式が進むほど、
 私の鼓動は静けさの中で輪郭を濃くしていく。
 祈りの言葉を唱えながらも、
 心の底で別の願いがかすかに生まれてしまう。

 (どうか、この想いが罰になりませんように。)

 祈りは巫女としての務め。
 でもこの一瞬だけは――
 “ひとりの少女”として
 胸の内をさらけ出した祈りだった。

 最後の祝詞を終えると、
 私は静かに顔を上げ、
 儀式を見守る者たちへと視線を向けた。

 彼と目が合いそうになった。
 ほんの一瞬で、すぐに逸らされる。
 けれどその刹那が胸に刺さる。

 (あぁ――どうして、
 あなたの視線ひとつでこんなにも
 揺れてしまうの。)

 巫女としての私と、
 少女としての私は、
 今日も同じ衣を纏って立っている。

 ただひとつ違うのは、
 胸の奥に、
 誰にも知られてはいけない色が
 芽生えていること。

 それを抱えたまま、私は今日も祈る。
 祈りが届く先も知らないまま。
プロンプト
なし
1件のコメント
せきチャソ
何とも切ないストーリー…
彼女の一人の少女としてのたった一つの祈り(願い)も、いつか報われることを願います…


 
竜胆-Rindou-@AI_Art 竜胆-Rindou-@AI_Art 2025年2月より活動開始 143投稿88フォロー233フォロワー はじめまして(*´-ω-))ペコリ 竜胆(リンドウ)といいます。 まだまだ初心者の域を出ておりませんが、楽しんでイラストを生成しつつ、成長して行けたらと思います。どうぞよろしくお願いします«٩(*´ ꒳ `*)۶»