【秋空に響く旋律】

夕暮れの草原に、ひとり立つ少女。

秋風に揺れる黒いワンピースが、風景に溶け込むように静かだった。

彼女が弓を引いた瞬間、音は空を満たし、山の静寂を優しく振るわせた。

音は目に見えないはずだった。

けれどその日、空に浮かんだのは光の蝶。

ひとつ、またひとつと、旋律に導かれるように羽ばたいてゆく。

山は黙って見守り、雲は音に耳を傾ける。

その音は、誰かの記憶を呼び起こす。

懐かしさ、切なさ、そして…希望。

音が止んだとき、蝶たちは空の彼方へ消え、空はほんの少し、色を変えた。

あれは本当に音だったのか、それとも想いの姿だったのか。

わかっているのはただ一つ。

あの旋律は、確かに秋空を響かせていた。