真夏の合宿
2025/8/13使用したAI Stable Diffusion XL
年齢制限 R-15
真夏の午後、体育館の空気はむっとするほど重かった。窓は全開にしてあるのに、外から入ってくるのは熱を含んだ風だけだ。
 床のきしむ音、バスケットボールが床を打つドリブルの響き。そんな自分たちの音の奥で、もうひとつ違うリズムが聞こえる。
 軽やかな足音と、時折鳴るタンッというバトンが床を叩く音。それは僕の視線を自然と体育館の隅へ向かわせる。

 そこには新体操部の練習風景があった。青いマットの上、長いポニーテールを高く結い、白いリボンを揺らす女の子――江ノ島 操。
 リズムに合わせて伸びる腕、しなやかに反る背中。レオタードに滲む汗はライトに反射してきらめき、スポーツの厳しさと女性らしい美しさが同居していた。

 僕は思春期真っ只中の男子で、正直、そんな光景から目を離せなかった。

 「おい、〇〇! 集中しろって!」
 チームメイトの声にハッとして正面を向くが、遅かった。僕が受け損ねたパスは無情にも横へ逸れ、ゴロゴロと転がっていく。
 行き先は……やっぱり操の足元だった。

 彼女は一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐに柔らかく笑みを浮かべ、屈んでボールを拾い上げた。
 「はいっ!」
 弾む声とともに、予想以上に力強いパスが飛んできた。僕は慌ててキャッチし、「ありがとう!」と返す。
 声が少し裏返ったのは……まあ、気のせいってことにしておこう。

 操は軽くうなずき、また仲間の輪に戻っていった。再びポニーテールが揺れ、彼女の視線はもう演技の先へ向けられている。
 ただ、それだけの出来事――けれど僕の胸の奥では、何かが静かに弾けたような感覚があった。

 この夏合宿は正直、嫌なものだった。朝から晩まで練習、監督の叱責、汗と疲労で一日が終わる。
 でも、今は少しだけ違う。体育館に来れば、あの青いマットの上で操が跳び、回り、笑っている。
 ただそれだけで、僕はこの合宿を少しだけ好きになれそうな気がした。

 練習が終わるころ、僕はもう一度だけマットの方を見た。
 操は最後のルーティンを終え、仲間たちと笑い合っている。額に貼りついた髪を指で払う仕草も、どこか凛としていて眩しかった。

 バスケットボールを胸に抱えたまま、僕は心の中で決めた。
 ――明日も、この体育館で頑張ろう。
 たとえ汗だくになっても、足が棒になっても。ここに来れば、またあの笑顔を見られるのだから。
プロンプト
なし
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