猫の散歩道  chapter1
2025/8/7使用したAI Stable Diffusion XL
年齢制限 R-15
眼鏡をかけていない視界は、少し曖昧で柔らかい。

世界の輪郭がぼやけて、まるで夢の中にいるようだった。

高嶺静香は、夏の休日、猫耳フードをかぶり、真っ白なワンピースで静かな海沿いの場所を歩いていた。
普段の制服姿とはまるで別人。赤い眼鏡も、今日は家に置いてきた。
理由は簡単──「誰にも気づかれたくなかったから」。

「……ふふっ、これなら、たとえクラスメイトとすれ違っても、気づかれないでしょうね」

誰にも見られず、誰からも「委員長」と呼ばれず、ただ好きなものを好きなように愛する日。
その象徴が、今頭にかぶっている猫耳フードだった。

とある角を曲がったとき、静香はふと足を止めた。
前方に、白く小柄な猫がちょこんと座っていたのだ。

「まあ……あなたは、初めて見るわね」

声をかけたが、猫は一瞬こちらを見ただけで、すぐに路地裏の奥へすっと姿を消した。

静香は小さな好奇心に導かれるように、猫のあとを追った。
眼鏡をかけていないせいで、視界の曖昧さが、世界の輪郭を溶かしてくれるようで、「素の自分」に近づける気がした。

猫は、細い裏道を何度も曲がって進む。
途中、小さな公園のすべり台の影を通り抜けたり、古い井戸のある空き地をかすめたり。
まるで迷路のような道のりだったが、不思議と不安はなかった。

「……知らない道ばかり。こんなところが近所にあったなんて」

風にゆれる洗濯物、路地裏の軒先の植木鉢、どこか懐かしいような景色の中を、彼女はただ静かに歩いた。
時折、猫がこちらを振り返り、まるで案内人のような目をするのも、どこか滑稽で可愛らしかった。

やがて、猫がぴたりと立ち止まり、小さな門の前に座り込んだ。
静香もその後ろに立って、ふと表札に目を向けた瞬間──目を瞬いた。

《高嶺》

「……えっ?」

「ここ……私の家……?」

辺りを見回す。知らない道を歩いてきたはずなのに、気がつけば家の前に立っていたのだ。

「……こんな帰り道があったのね」

そうつぶやくと、隣にちょこんと座った猫に目を向ける。
猫は何も言わず、尻尾をふわりと揺らした。

猫がぴょんと塀を飛び越えて消えるのを見届けると、静香は小さく笑って、そっと門扉に手をかけた。

「──また、案内してくれるかしら」

風が少し涼しくなってきた。
夏の終わりの気配が、どこか愛おしく感じられた。
プロンプト
なし
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