秘密のレインコート
2025/5/26使用したAI Stable Diffusion XL
年齢制限 全年齢
放課後、土砂降りのグラウンドを横切ろうとした怜花は、校舎裏の軒先に、ぽつんと立つ華蓮の姿を見つけた。

濡れた石畳に静かに立ち尽くすその姿は、まるで彫刻のようだった。けれど――なにか、違和感。

「華蓮さん?」

声をかけても振り向かない。レインコートのフードを深くかぶって、顔もほとんど見えない。

「具合、悪いの?」

怜花が心配して近づくと、華蓮はやや硬い動きで小さく頷いた。

「問題ありません。少し……事情がありまして」

「じ、事情……?」

怜花が首を傾げると、ふいにフードの中から――「みゃっ」と、小さな声。

「……えっ?」

怜花が覗き込もうとすると、華蓮はフードを両手でギュッと押さえた。

「見ないでください。まだ、非公式です」

「非公式って、なにが!?」

「猫です」

即答だった。

驚いて数秒固まった怜花の前で、華蓮は静かに説明を始めた。

「帰り道、用水路のところでずぶ濡れの子猫を見つけました。放っておけなくて……一時的に、レインコート内で保護しています」

「いや、でも、それって――」

「正式な手続きはこれからです。まずは、命の確保を優先しました」

冷静かつ堂々とした物言いに、怜花はつい笑ってしまった。

「……華蓮さんって、そういうところあるわね」

「どのような“そういう”ですか?」

「理屈っぽいのに、すごく……やさしいところ」

華蓮は少しだけ沈黙してから、小さく肩をすくめた。

「……私の服の中、あたたかいみたいです」

「うん。そうね」

ふたりの間に静かな雨音が降る。フードのなかで、小さな命がくるんと丸まって眠っていた。

怜花はそっと自分のレインコートを脱ぎ、華蓮の肩にかけてあげた。

「じゃあ先生と“非公式で共同保護”ってことで」

「それは……ずいぶん曖昧な公式ですね」

「先生だから許される“特権的公式”ってことで、どう?」

華蓮は小さく吹き出した。

雨音が少しだけ軽くなる。ふたりの肩を包むレインコートに、小さな秘密と、ぬくもりがひとつ、そっと宿っていた。
プロンプト
なし
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