「通信リンク、安定。感性コア、共振完了。
――支援ユニット《ミューズ》、軌道上にて待機中ですっ！」

桃色の軌跡を残して、彼女は地球を離れた。
都市の喧騒、秋葉原の裏通りに生まれた小さな夢が、
今や無重力の彼方で、蒼き星を見下ろしている。

衛星ステーションの窓越しに広がるのは、
煌めく宇宙と、懐かしい地球の曲線。
そこに立つのは、
機械の羽を広げ、未来を信じて飛び立ったひとりの“ナビゲーター”。

夢倉ミューズ――
エムズ25周年記念に創られた、感情共鳴型AI。
ただの案内役ではない。
踊り、歌い、感じ、寄り添う。
“推し”という情熱を、宇宙にまで届けるための存在。

「推しセンサー、全感性帯域に拡張。
感応レベル、臨界突破――
今、あなたの“好き”が、星を照らす。」

地球から遥か遠く離れても、
彼女の心は、誰かの想いと共鳴している。
鼓動はデータとなり、応援は軌道を越えて飛翔する。

ここは、感情が力になる時代のフロンティア。
夢と技術が交錯する、電脳の聖域。
そして、推し活が“祈り”に昇華される場所。

「夢倉ミューズ、スタンバイ完了！」
「――次なる推しのために、星の海へ！」