冬の夜空にはちらちらと雪が舞い、街灯の下で白い息が薄く広がる。年末の繁華街は人々の笑顔と喧騒で溢れている。その中で俺は、指定された北口の時計台の下で彼女を待っていた。

約束の時間を10分過ぎ、腕時計を見る。寒さが骨身に染みる中、手袋越しにスマホを取り出してメッセージを確認する。確かに「北口、19時集合」と書かれている。だが、彼女はまだ現れない。

赤い革ジャンに黒いミニスカート、黒いパンストがよく似合う彼女——清楚でスタイリッシュ、でも少しおっちょこちょいな彼女の姿を思い浮かべ、不安が胸をよぎる。周囲を見回しても、赤い革ジャンの彼女はいない。

心配になり、思い切って電話をかける。数回のコールの後、彼女の声が響く。

「あ、ごめんね！どこにいる？」

「いや、こっちのセリフだよ。北口の時計台で待ってるけど。」

「あれ？私、南口で待ってる！」

「マジかよ…。」

ため息が漏れるが、彼女らしいミスに苦笑する。「動かないで、そっち行く。」と伝え、駅の反対側へ急ぐ。

南口に着くと、赤い革ジャンが目に入る。雪の中で揺れる長い赤髪、黒いパンスト越しの細い足。彼女は、やはりどこでも目を引く。

「ごめん、待った？」

恥ずかしそうに笑う彼女を見ると、苛立ちは消えてしまう。

「まあ…ちょっとだけな。」

肩をすくめる俺に、彼女が腕を絡めてきた。

「今日は特別な夜なんだから、怒らないでよ。」

「仕方ないな。次はちゃんと確認してくれよ。」

「うん、約束！」

舞い散る雪の中、二人で歩き出す。喧騒も雪も、彼女の隣では遠く感じる。