露庵「戦いは殆ど一方的だったよ。あまりにも多勢に無勢で護衛対象の獣人も、一緒に護衛していた仲間も失った。それでも紫庵は戦い続けた。」
桃香「…なんちゅう話や。」
露庵「一人になっても凌いでたけど、更に天使達の数が増えたんだ。他の護送隊が全滅したから、私達の方に合流したみたいで。…それまで頑張って来たんだけど、最後は紫庵が右腕を斬り落とされて…ッ！！」
桃香「…ッ！！」

シルヴィア「オレ達がやっと救援に来た時には既に満身創痍だったんだが、あの娘はそれでも戦い続けてたよ。」
露庵「………私が内側から魔力を分け与えて右腕の出血と痛みを抑えてたんだけど、それを引いてもあの時の紫庵は凄かった…」
桃香＆ニュクス「………」

シルヴィア「兎に角、オレ達が来てから形勢逆転にしてよ、天使共もあっさり撤退していったんだが…なぁ…。」
桃香「？」

シルヴィア「何故か数人の一小隊だけ逃げずに戦い続けてたんだ。」
桃香「なんで？」
シルヴィア「分からない。ただ戦い続けるもんだからこっちも応戦して、最後に残った隊長らしき女天使を紫庵って娘がトドメを刺したんだ。」

ニュクス「その天使が…私が男だった時に愛した女性だったんだ！」
全員「！！？」
ニュクス「かつて愛した女性を殺した相手を探して、それがお前達だと分かって、仇を取ろうとしたんだよ！」
露庵「っふざけんな！！私達はその何倍も仲間達を殺されたんだ！そもそも撤退し始めた時に一緒に逃げりゃ良かっただけなのに、逃げずに戦い続けたから仕方ないでしょっ！！」
ニュクス「その話は分かっている！分かっているがな、あの人への想いは割り切れる訳じゃないんだ！！」

桃香「あ〜、はいはい。分ぁ〜ったでアンタの気持ちが。」
露庵「桃香！？」
ニュクス「何が私の気持ちが分かるだ！？」
桃香「分かるで。アンタが襲って来た時に、アンタの迷いが見えたけんな。」
ニュクス「何だと！？」
桃香「ウチな人と接すると感情が読み取れる力があるんやわ。」
露庵「え！？初耳なんだけど！？」
桃香「本当に仇を討つ事がその人の望んでるのか、そう言う迷いが見えたんや。」
ニュクス「…だが、実際に望んでいるかも知れないだろ！？」
桃香「それもないわ。」
ニュクス「何を証拠に！？」



桃香「…アンタの側で、その人泣いてるんやし。」



ニュクス「………えっ！？」